【考察】生活環境の変化に伴い発症した股関節痛に対し足部機能への介入が有効であった一症例
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【考察】生活環境の変化に伴い発症した股関節痛に対し足部機能への介入が有効であった一症例
要旨
【目的】
退職後の生活環境変化に伴い発症した左股関節痛に対し、足部機能に着目した評価および介入を行い、良好な結果を得たため報告する。
【症例】
60代女性。長年小学校教員として勤務していたが、退職後に活動量が減少し、左股関節部から大腿部、下腿部にかけての疼痛を自覚するようになった。立ち上がり動作および歩行時に疼痛が増悪していた。
【方法】
姿勢分析、荷重バランス評価および動作分析を実施した。その結果、左側への荷重依存、左足部外側荷重、足趾機能低下および足部支持機能低下が認められた。これらの所見に対し、物理療法および足部機能改善を目的とした運動療法を実施した。
【結果】
疼痛評価(NRS)は安静時3から0、歩行時7から3、立ち上がり時8から4へ改善した。
【結論】
本症例では、股関節痛に対して足部機能および荷重バランスへの介入が疼痛軽減に寄与した可能性が示唆された。
緒言
近年、高齢化の進行に伴い、退職後の生活環境変化による活動量低下が運動器機能へ及ぼす影響が注目されている。活動量の減少は筋力低下や身体機能低下を招き、潜在的な機能障害を顕在化させる要因となる可能性がある。
股関節痛に対する治療では局所への介入が中心となることが多いが、運動連鎖の観点からは足部機能や荷重バランスの評価も重要であると考えられる。
今回、退職後に発症した股関節痛患者に対し、足部機能に着目した評価および介入を行い、症状改善を認めたため報告する。
症例
患者は60代女性である。
主訴は左股関節部から大腿部および下腿部にかけての疼痛であった。
2026年3月に小学校教員を退職した後、活動量が減少し、徐々に左股関節部痛を自覚するようになった。立ち上がり動作および歩行時に疼痛が増悪し、日常生活動作にも支障を認めたため来院した。
初診時の姿勢評価では前方頭位姿勢を認め、立位では左側への荷重依存傾向が観察された。また左足部において外側荷重が顕著であり、足趾機能低下および足部支持機能低下を認めた。
動作分析では、立ち上がり動作および歩行時に左股関節へ負荷が集中する代償的な運動パターンが観察された。
施術方法
疼痛軽減および運動機能改善を目的として以下の介入を実施した。
1.物理療法
左股関節周囲および下腿後面に筋緊張亢進を認めたため、低周波治療器を用いて筋緊張緩和を図った。
2.運動療法
足部アライメント調整および荷重バランス改善を目的とした徒手的介入を実施した。
さらに、自宅でのセルフエクササイズとして、
- タオルギャザー
- 足趾グーパー運動
- アキレス腱ストレッチ
を指導した。
結果
疼痛評価にはNumerical Rating Scale(NRS)を用いた。
| 動作 | 初診時 | 初回施術後 |
|---|---|---|
| 安静時 | 3 | 0 |
| 歩行時 | 7 | 3 |
| 立ち上がり時 | 8 | 4 |
初回介入後、すべての評価項目において疼痛の軽減が認められた。
考察
本症例では、退職後の活動量低下を契機として股関節痛が発症した。
評価の結果、左側への荷重依存、左足部外側荷重および足部支持機能低下が認められた。これらの要因により、歩行や立ち上がり動作時に股関節へ過剰な負荷が集中していた可能性が考えられる。
足部は身体を支持する最終接地面であり、その機能低下は下肢全体のアライメントおよび運動連鎖に影響を及ぼすことが知られている。本症例においても、足部機能の改善を目的とした介入後に疼痛軽減が認められたことから、足部機能と股関節痛との関連性が示唆された。
一方、本報告は単一症例であり、また短期的な経過観察に留まるため、因果関係を明確に示すものではない。今後は症例数を蓄積し、長期的な経過観察を含めた検討が必要である。
結語
退職後の生活環境変化に伴い発症した股関節痛患者に対し、足部機能および荷重バランスに着目した評価と介入を実施した結果、疼痛の改善が認められた。
股関節痛に対する評価においては局所のみならず、足部機能を含めた運動連鎖全体の視点が重要である可能性が示唆された。
