人間と蟻と蜂の共通点 Mental-health
症状から記事を探す
なぜ真社会性生物は成功できたか?
「人間の身体:試行錯誤の結晶」
私たちの身体は、精密な機械のように複雑で、一つのパーツが狂うだけで全体の機能が影響を受けます。その複雑さは、偶然の産物とは思えないほどです。神のような存在による設計を感じさせるほどですが、実際には生命の進化という長い時間を通じた試行錯誤の結果です。
地球の歴史を一年間に例えると、地球が誕生した46億年前が元日の0時、現在が大晦日の24時とします。生命が始まったのは3月後半、魚類が誕生したのは11月末。最初の人類が現れたのは大晦日の朝、ホモ・サピエンスの誕生は年が明ける10分前です。メソポタミア文明の始まりは、年越しカウントダウンが始まる頃にあたります。
この46億年という時間のスケールを理解するのは難しいですが、人間の身体や心は、その長い年月をかけた無数の試行錯誤の積み重ねで形作られています。
「生きる目的:生存と複製」
進化の長い過程で、地球上には驚くほど多様な生物が誕生しました。現在発見されているだけで約125万種、まだ見つかっていない生物も含めると、約870万種もの生物が存在すると考えられています。昆虫や軟体動物など、無脊椎動物の多様性は特に驚異的です。
しかし、どんなに形や姿が異なっていても、すべての生物には共通する目的があります。それは、生き延びて自分の遺伝情報を次世代に伝えることです。永遠に生きる生物は存在せず、すべての生物には生と死があります。分裂や繁殖という形で、自己の遺伝情報を次の世代に伝えることが、生物にとっての究極の目的です。
生物の遺伝情報は、DNAによって保存されています。DNAは、生物の設計図のようなもので、そこに記録された情報に基づいて、生物は自分自身のコピーを作り出します。この驚くべきプロセスは、地球上のあらゆる生物に共通しているのです。
「生物の複製戦術:組織化の重要性」
進化を別の視点から見ると、生物が自己複製の方法を最適化する過程だと言えます。この最適化のカギは、常に協力と分業にあります。例えば、初期のRNA分子は単独で活動していましたが、やがて細胞膜を持ち、徐々に集まり始めました。そこから細胞間の協力や機能の分担が始まりました。
多細胞生物は、個々の細胞がそれぞれの役割を担う一種の組織のようなものです。私たち人間も例外ではありません。内臓、神経、皮膚など、様々な器官が分業して生命を維持しています。重要な自己複製の役割は生殖細胞が担い、他の細胞はサポートに専念しています。裏方のような仕事をする細胞も不満を持たず、全細胞が協力して一つの目標に向かっています。
このような緻密な分業体制のおかげで、生物は複製という大きな目的を達成し、進化してきました。
「サピエンスの組織化能力」
私たちの身体は、46億年の進化の歴史を経て、完璧に近い組織となりました。神経やホルモンは情報を正確かつ迅速に伝達し、血管は栄養を体の隅々まで届けます。内臓はそれぞれの専門分野を黙々とこなし、他の器官との競争や不満はありません。すべての細胞が共通の目標に向かって協力し、体全体が効率的に機能しています。
しかし、この協力と分業の進化は、ホモ・サピエンスに至ってさらに進んでいます。ホモ・サピエンスとそれ以前の人類の大きな違いは、より高度な組織と分業を実現したことです。ネアンデルタール人が単純な協力体制を築いていたのに対し、ホモ・サピエンスはより統制された組織的な形で活動しました。つまり、私たちの特徴は、個体内部だけでなく、個体間でも協力し分業する能力にあるのです。
『真社会性生物』の成功の秘密」
私たち人間のように、細かく分業する生物は非常に珍しいです。遺伝的に関係のない他の個体とも分業する生物を「真社会性生物」と呼びます。これには、アリやハチなどの節足動物や、一部の海洋性甲殻類が含まれます。哺乳類では、私たち人間とデバネズミしか該当しません。
特筆すべき点は、これらの生物の個体数が非常に多いことです。たとえば、地球上のアリの総数が一京(十の10乗)に達するという説もあります。その正確性は定かではありませんが、アリやハチの数がトラやイルカなどよりもはるかに多いことは確かです。協力し、分業できる集団主義的な生物が成功しているというわけです。この点は、私たち人間にも当てはまると言えるでしょう。
「遺伝子と私たちの幸福」
人類が生き残り、文明を築き、地球の資源を利用してきたのは、協力と分業への適応が理由です。身勝手な行動や個人主義に対する不快感は、これを避けるための警告信号のようなものです。生物学的には、遺伝子は単に子孫を残すための手段に過ぎません。しかし、遺伝子から見ると、生物は遺伝子を運ぶ「乗り物」のような存在です。遺伝子は、新しい個体へと乗り換えて生き延びることを目指します。
遺伝子は、生存と繁殖の機会を増やすために、無意識的な行動を促します。その結果、私たちが幸せかどうかは遺伝子にとって重要ではありません。46億年の進化の歴史を個人の意志で変えることはできないため、孤独感や劣等感などの感情をただ嫌うのではなく、それらを成長の糧に変える方法を学ぶことが賢明です。